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国際投資の黄金ルール
中国株に投資すること。それはまだまだ新興市場への投資といえるでしょう。 日本の投資家は、中国株という国際投資に、どういう姿勢で臨むべきなのでしょうか。そのヒントを与えてくれる投資家がいます。 マーク・モビアス。写真をごらんになれば、お分かりのように、その風貌はスキンヘッドで異様です。風貌は「他の投資家の裏道を歩く」という意思表示のようにも見えます。しかし、経歴はオーソドックスです。 ボストン大学で修士号、マサチューセッツ工科大学で博士号を取得。香港、シンガポールを拠点に、コンサルタント、アナリストとして、その後、ファンドマネジャーとして活躍。1987年、テンプルトン・グループに入社。屈指の運用成績を誇る新興市場投資の第一人者。92年にサンデーテレグラフ、93年にモーニングスター、94年にCNBCから最優秀マネジャーに選ばれる。 彼が入り込んだ市場は、普通の機関投資家は「リスクがありすぎる」と言って決して寄り付かなかった市場です。ロシア・東欧、ラテンアメリカ、アフリカ、そしてアジア・・・。市場が暴落したときに入り、投資家の評価が高まってブームになると静かに市場を去る。投資家の理想ですが、実際はたやすいことではありません。 では、マーク・モビアスは、どんな原理原則で新興市場に入り込み、市場と向き合ったのでしょうか。 原則@ 「最大の防御は分散投資である」 モビアスがまず最初に提案するのは分散投資です。私たち中国株の投資家に当てはめると、まずは資金すべてを中国株に投入せず、日本や米国の株式・債券・現金などに分散すること。そして中国株の保有銘柄も分散することが重要だということです。そうした基本姿勢を踏まえたうえで、彼はこう言い切ります。 原則A 「取ったリスクは報われる」 彼は、次の5カ国を「未来の経済大国」といっています。中国、インド、インドネシア、ブラジル、ロシア。 「この5カ国は10年前ならば、世界の金融危険地帯に間違いなく入っていただろう。だが、世界銀行の予測によれば、これら急速に発展しつつある国々の成長率は2006年まで年平均5・4パーセントに上る。先進工業国が達成する3%以下の成長率を大きく上回っている」と指摘しています。そして、こう提案します。 原則B 「世界で最も急速に成長している経済に投資したいなら、思い切って新興市場に飛び込むことだ」 1987年から97年までの間、3つの主要新興市場・中国、インド、マレーシアの経済は118パーセント以上拡大。一方、3つの主要な先進国・米国、日本、英国の経済は58パーセント以下の拡大にとどまりました。 しかし、彼は、この素晴らしい成長率を、新興市場の株式市場が無限に上昇する証拠と受け取らないように注意しよう、とクギをさしています。それは1997年から98年の「アジア風邪」と呼ばれた危機があります。新興市場は富と繁栄の途上で何度かつまづくことがあります。だからこそ、モビアスは「大きなリスクを適切に管理して、初めて長期的なリターンが得られるのだ」と強調しています。 それでは、国際投資家・モビアスが見た新興市場のリスクとは何があったのでしょうか。 @、政治リスク 革命や政治的混乱が国有化や資産の没収につながるなど投資価値を帳消しにするリスク A、為替リスク その国の通貨の変動が投資に与えるリスク B、企業リスク 不十分・不誠実な経営を原因とする株主利益の減少 C、ブローカー・リスク 自分のバランスシートを改善するため投資家から巻き上げようとする悪質なブローカー D、決済リスク 取引を決済するときや証券を入手・登録するときに生じる問題 E、保管リスク 顧客の持分に応じた証券の数を提供しないかもしれない保管代理人のリスク F、オペレーション・リスク 不十分な会計監査や会計基準から生じるリスク G、市場リスク 市場価値が激しく変動するリスク この8つのリスクを中国株に照らし合わせてみます。 まず、政治リスクですが、これは中国の場合、革命や政治的混乱ということではなく、市場原理より政治の思惑が優先した金融・経済政策が実施されるリスクはまだまだありそうです。たとえば、インフレ対策にしても、元の切り上げではなく、金融引き締めを強化するといった経済政策も、政治リスクのひとつかもしれません。 次の為替リスクですが、これは短期的には円安・ドル高局面で日本の投資家に悪影響があるかもしれませんが、長期投資を考えるのなら、いずれは元の切り上げは避けられないでしょうから、むしろ中国株投資家にとってはメリットになる可能性の方が高いかもしれませんね。 3番目の不十分・不誠実な経営を原因として株主利益が減少する企業リスクは、中国株リスクのなかで大きな位置を占めます。P株(私営企業)の代表といわれた欧亜農業(ユーロアジア0932)や、華サン燃気(ワーサンガス8035)、遠東生物製薬 (ファーイーストファーマ0399 )の株価暴落は、まさにこの企業リスクに含まれます。(研究室・「中国株のリスクを考える」参照) 4〜6番目のブローカーリスク、決済リスク、保管リスクは、香港・中国本土市場ともに神経質になる必要はなさそうです。しかし、7番目の不十分な会計監査や会計基準から生じるオペレーション・リスクはまだまだ目が離せません。私自身、中国企業の決算内容はどこまで信じていいのか、半信半疑なところもあります。ただ、面白いのは、香港市場に併設されている中小成長企業市場・GEM(Groth Enterprise Market)は、上場規則が香港メインボードより緩い分、情報開示に関する規則が厳しくなっています。 最後の市場変動リスクですが、これは中国株に投資する以上、短期取引でサヤ取りしたい方でなければ、織り込んでおかないといけません。中国株の価格変動に、日々、心を動かされていては身が持ちません。 さて、モビアスに話題を戻します。そして、ここからがモビアス研究の佳境です。 モビアスは新興市場に投資する基本姿勢として「長期的な計画が儲かる」と断言しています。彼の言葉を紹介しましょう。 「ダウ平均株価が月間に10%変動しただけで、オロオロ、ハラハラするなら、トルコの市場に来てみるがいい。1ヶ月に50%の変動なんてザラである。香港の株式市場は昔から米国の3倍から4倍もボラティリティ(変動幅)が高い。『新興市場で2年以内に大儲けしたい』という人がいたら、どこか他に資金を持っていきなさい、と申し上げる。新興市場はほとんど躁うつ病のように変動が激しいので、市場のタイミングを計るのが難しい」 原則C 「長期的な計画が儲かる」 市場というのは決して合理的ではありません。市場参加者が恐怖心やパニックに陥るときと、恐ろしいほど元気なときと、時として、行きすぎが生じます。ましてや、新興市場は若者のように調子に乗りすぎる傾向があります。ですから、その激しい変動の波をサーファーのように乗りこなすことが重要です。そこでモビアスはこう提言します。 原則D 「悲観的見方が最大の時こそ、一番の買い時」 原則E 「楽観的見方が最大の時こそ、一番の売り時」 原則F 「トンネルの終わりに光が見えてから買う(売る)のでは遅すぎる」 この原則を中国株に戻します。2004年4月から5月半ばの急落時、市場は警戒感と投売り、失望が渦巻きました。中国当局が、鉄鋼やセメントなど素材関連、不動産、自動車の過熱感を抑えるため、金融機関に対する融資規制や行政指導を強め、さらには米中の利上げ観測が高まったためです。5月17日、香港H株指数は3501香港ドル、今年の最安値をつけました。4月13日には5053香港ドルの最高値をつけていましたから、およそ1ヶ月の間に約30%下落したことになります。 このときが買いのチャンスでした。目をつぶって買いに入った投資家は、モビアスの域にあるかもしれません。ですから、投資家はどの水準で買いに入るのか、自分自身の水準を持っておく必要があります。市場の声や市況解説に動かされていては、おそらくうまく波乗りはできないでしょう。 その買いの水準について、モビアスはこう言っています。 原則G 「相場が最近のピークから20%以上下がって、価値が見えてきたら、買い始めろ」 モビアスは、温和でシニカルな楽観主義者であることが、長期的に利益を得る最善の心構えであることが分かってきた、といいます。そして、こう強調します。 原則H 「時がほとんどの病を癒す」 かりに株価が急落しても経済成長が信じられる国の株価は、いつか反発し、投資家に大きな利益を与えてくれる。新興市場の投資家がその恩恵を得るには、「時間の力」こそ最大の味方だといえます。 投資家は、最後は自己責任ですが、勉強と研究こそが最大のリスク軽減策です。 私たち個人投資家は、機関投資家のように、日々、勝ち負けを求められているわけではありません。特に、長期投資を考える投資家にとって、しかも日本からは情報が得にくく、発展途上の国の企業に投資している投資家にとって、このモビアスの指針はとても参考になります。
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