銀座ホステスを斬る!
お金持ちへの道
素人の個人投資家はどんなことに気をつけて投資に臨めばいいのか。 機関投資家と違い、資金的にも、時間的にも、情報的にも、限界のある個人投資家が、ましてや日本株よりリスクが大きいとも言われる(ほたるはそうは思いませんが)中国株に投資するのは勇気が要ります。 その中国株など海外投資で成功した銀座ホステスが一冊の体験記を出版しました。 「わたし、かわいいお金を海外投資で増やしました〜銀座ホステスの華麗なる資産形成術」(実業之日本社)) 著者は浅川夏樹さん。上場企業のOLを経て、現在は法人代表の肩書きを持つ現役の銀座ホステスだそうです。 彼女はOLの頃から株式投資をやっていたといいます。80年代のバブル期、OL時代から保有していた株がすごい勢いで急騰し、まだキャッシュ化していない名目上の利益(見かけ上の利益)なのに気が大きくなって、ブランド品を買い、借金をホステスの給料で穴埋めするという失敗をしました。 その後、今度はITバブルが到来します。このときはヤフー、ユニクロ、光通信の株価が急騰しましたが、売る勇気がなく過ごしていたといいます。そんな彼女に転機が訪れます。 メニエール氏病という原因不明の自律神経系の病気です。病院の差額ベット代の高さに自宅で寝る毎日。不安のなかで、こう決意します。「ようし、お店を持とう」と。会社を設立するため、保有株の半分を売却し、銀座の電通通りにショットバーをオープンします。 ここまでは、よくありがちな病気で将来に不安を感じて独立するホステスのお話です。しかし、このあと重要な話が出てきます。お店をオープンして1ヶ月後のことでした。 お客さんから、こんな質問を受けます。 お客さん 「1年後に、このお店に、君のお客さんはいまの何割が継続して応援してきてくれると思う?」 著者 「3割ぐらいかな」 お客さん 「1割もいないよ」 別のお客さん 「まあ、そんなもんだろうな」 著者は絶句! お客さん 「一生懸命頑張ることと儲かることは全然違うからね。いままでの一生懸命頑張るという発想は、時間を拘束されて身体を使って頑張ることだけど、事業とか投資というのは頭を使って一生懸命頑張ることだからね。この違いを理解しないとダメだよ」 このお客さんの話は続きます。 お客さん 「銀座のホステスは個人事業者だったよね。このお店を開いて、ここで働いたら、君は(誰かに雇われて働くホステスと)同じ自営業者になるよね、わかる?」 著者 「はい」 お客さん 「これから君は自営業者ではなく事業経営者にならなくてはいけないよ。自分がいなくても継続できるシステムにしたほうがいい」 こうした会話のあと、このお客さんは、自分のバーを誰かに任せて、自分はどこかのクラブに働きに行ったほうがいいと提案します。著者はショックで店の中で倒れそうになったそうです。 しかし、この会話はとても重要です。 ロバート キヨサキさんは著書「金持ち父さん 貧乏父さん」の中で、人々の立場を4つに分けています。 @従業員A自営業者BビジネスオーナーC投資家 そしてお金持ちになるにはBとCを目指さないといけないと説いています。お客さんとの会話は、このロバートキヨサキさんの主張と通じています。 自営業者とビジネスオーナーは似て非なるものです。ほたるも小さな会社を経営して実感するのですが、社長がいないと回らないような会社は「自営業者」の会社です。私の場合、まだまだ、この域を出ていません。 一方、ビジネスオーナーは、会社で従業員と一緒に汗水流して働いたりしません。事業のスキームやビジネスモデルを考え、それを会社に降ろします。それだけです。ですから、時間に余裕があり、他の会社を設立したり、投資に時間を使ったりできるわけです。 もうひとつ、これはサラリーマンには重要な点です。 それは「決して収入源をひとつにするな」ということです。この著者は他人のお店でホステスとして働いたお給料と、自分が経営するバーの収入という2つの収入源を持ちました。 サラリーマンだって同じです。 脱サラをして投資に専念したり、給料の方が投資や副業より多いのに会社の仕事をおろそかにするのは、投資以前にリスクを拡大しているようなものです。 現金や収入が減ると、リスクを取れる幅も狭まります。ですから、投資でもナンピンができなかったり、弱気の売買を繰り返したり、信用取引に手を出したり、投資は裏目裏目に出ます。 ですから、会社からの給料と、副業・投資の収入という、2つの収入源はきちんと確保することがとても重要です。 さて、それでは投資のお話に移りますね。 著者は「やっぱり金融投資は魅力的」のなかで、金融投資の利点をこう説きます。 「金融投資の利点は投資先を分散しやすいことです。不動産投資が一括投資であるのに対し、金融投資は時間の分散、国の分散がより手軽にできます。また海外に不動産を持つことは可能ですが、管理費がかかります。金融投資は好きな国に投資ができます。手続きは不動産よりも樂です」 そして投資の基本的な方針も、教訓に基づいて、しっかりしています。 @投資する金額を決める 著者は毎月、どのくらい投資できるかを決め、その資金は何があっても手をつけず、別に管理し、残ったお金で生活しました。これができるまで相当時間がかかったそうです。何度も欲をかいて必要資金(生活資金)を投資にまわし、急騰急落で精神的に気分が悪くなったことも数え切れないといいます。 A投資する期間を決める 投資の期間が長ければ長いほど、いろいろなことにチャレンジできますが、短ければかなり慎重な投資が必要になります。長期で運用する場合、ドル・コスト法といって毎月、一定の金額で投資することもひとつの方法です。毎月、同じ額を投資すると、株価が高いときは少ししか買えないし、株価が低いときには買える株数も多くなるので、約定価格を平均化でき、価格変動リスクや為替リスクを軽減できます。 B投資する通貨・国を決める エマージング(発展途上国)のパフォーマンスは目を見張るものがありますが、リスクを軽減するため、著者は投資先の国を分散しています。 投資に失敗した理由が分かれば、軌道修正できます。しかし、その理由が分からず、しゃにむに投資していると、さらに墓穴を掘ってしまします。それを避けるためには、やはり良書に学ぶことが不可欠です。 著者が参考にした本は次のようなものでした。 @「敗者のゲーム」(チャールズ・エリス著 日本経済新聞社) 著者の感想「記憶に残ったのは『市場に勝つ唯一の方法は他の投資家のミスを利用すること』と書かれていた箇所です。集団行動をしていてはダメだと分かりました」(この点はほたるも同感です。市場が売りに走っているときに買う、買いに走っているときに売るのが鉄則です) A「投資の心理学」(ローレンス・E・リフソン 東洋経済新聞社) 著者の感想「心理学、臨床医学、大学教授、投資情報などの専門家たちが『心理学がいかに投資に影響を与えるか』を研究した成果をまとめた内容で、その対処法が書かれています」(この本は以前から、ほたるが是非とも読みたかった本です) B「ウォール街のランダム・ウォーカー」(バートン・マルキール 日本経済新聞社) 著者の感想「テクニカル分析、ファンダメンタル分析はなぜうまくいかないのか書かれており、市場全体に投資をするインデックス・ファンドをすすめています」(テクニカル分析やファンダメンタル分析がなぜうまくいかないのか、という点について、ぜひ勉強しておいた方がいいですよね) というわけで、いよいよ中国株の記述に入ります。 そこで著者は「エマージング市場」のリスクを説き、まずはあの本を読んでおくことを推奨しています。そうです。当研究室でも詳細に紹介した「国際投資へのパスポート」(日本経済新聞社)です。40年間で資産を150倍にした伝説のファンド・マネージャー「マーク・モビアス」の著書です。 それでは、日本株をやっていた著者がなぜ中国株に魅せられたのか?こう強調しています。 「中国株を購入し始めて感じるのは、中国株は日本株よりも面白い!ということです。宝探しをしているようなものです。どの企業が数年後に大きくなるだろうかと期待が膨らみます。魅力は@騰落率A低PERB高配当といったところです」 その著者が銘柄選択で重視していることは ・時価総額が大きいこと ・国際的に認められる優良企業(『フォーブス2000』などにランキングされる企業) ・外資系企業と提携していること、もしくは香港市場に上場している外資系企業 ・指数銘柄であること ・インフラ銘柄であること(電力、高速道路、石油、鉄鋼) ・配当があること ・医療分野は競合に勝てる技術があること そして面白いのは、著者はインターネットの掲示板で情報収集をしていたといいます。 印象深かったのは次の記述です。 「中国株を始めてみて何が一番不安かというと、掲示板のメンバーのほとんどが一致する感想ですが、中国株は政治的要因で左右されるということです。政府の要人が変われば、恩恵を受けられる企業も変わり、ライセンスまでもが変わるからです。掲示板のメンバーが次のようなコメントを投稿しました。『株価が倍になったら半分売ろうとか、3倍になったら3分の1売ろうとか、いろいろ誘惑が多いですが、じっと我慢して歴史の検証者になろうと思います』。私も歴史の検証者です。株の行方もさることながら、中国がどう変わっていくのか見続けたいと思います」 中国株で儲けたい。だれもがそう思って、中国株投資に入るのですが、なぜか多くの人たちが「中国がどう変わっていくのか見続けたい」という気持ちになっていくようです。もちろん、ほたるも、いまは、そんな気持ちが強いのです。 さて最後に、この 「わたし、かわいいお金を海外投資で増やしました〜銀座ホステスの華麗なる資産形成術」ですが、ほたるが予想していた以上に、真面目な投資の基本書でした。今回、ご紹介しませんでしたが、投資全般についての記述がとても整理されているうえに、中国だけでなくインドやロシアといった、高パフォーマンスのエマージング市場(新興市場)についても、とてもコンパクトで要点を抑えた説明がされています。惜しむらくは、もう少し著者自身の投資実績を時系列的に詳細に説明してほしかったという感じはしますが、オススメの良書です。 とくに初心者から中級者には、とても参考になる一冊です。
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