楽天と派手なプロ野球参入争いを展開し、敗れたライフドア。しかし、株式市場は球団経営というお荷物を保有しなかったライフドアを「買い」と判断し、株価は急騰した。一方の楽天は下げた。 一連の参入騒動を通じて、ライフドアの堀江貴文社長は超低コストの広告・宣伝を手に入れ、企業をナショナルブランドまで押し上げ、そして参入できなかったことで株価が急騰するという、まさに「負けるが勝ち」を演じました。 本稿では、そのライフドアの経営と堀江社長の言動を分析し、中国株の投資に通じる勘所を考察したいと思います。 ライブドアの売り上げは2003年は100億円、そして2004年度9月期には250億円以上になりそうです。 ライブドアは1996年の創業以来、倍々ゲームで業績を伸ばしてきました。インターネット関連企業のなかで、2004年7月時点で、時価総額はヤフー、ソフトバンク、楽天に次いで4位。「もちろん、近い将来の逆転を狙っています」(堀江社長) それでは、ライフドアって、いったい、どんな事業をして、それぞれの部門がどのくらいの売り上げがあるのでしょうか? 「稼ぐが勝ち」(堀江貴文著)を参考に説明します。 まずは「ネットメディア事業」。ポータルサイト「ライブドア」の運営です。このサイトの売り上げは2004年度中間決算(半期)で6億5100万円。「目標はヤフーを抜くこと」だそうです。 次に「ソフトウェア事業」があります。パソコンのソフトを売る部門です。基本OAの「リンドウズ」、ウェブブラウザの「オペラ」、メールソフトの「ユードラ」など、毎月数タイトルの新作ソフトを開発・販売しています。最近は、ゲームなどエンターテインメント分野にも力を入れています。この部門の売り上げは半期で8億1900万円。 3つ目は「イーコマース事業」。インターネットを通じて物を売る部門です。ライブドア経営のウェブショップ「アスキーストア」は、パソコン関連商品から、家電、産直のズワイガニや生うになど海産物まで幅広い商品を扱っています。売り上げは半期で4億300万円。 4つ目は「イーファイナンス事業」。マネー関連事業です。外国為替保証金取引の「ライブドアFX」の売り上げは、29億9800万円(前同期比473%増)。2004年7月にはオンライントレードサイト「ライブドア証券」も開設。今後の成長が期待されています。 5つ目は「モバイルソリュージョン事業」。モバイル向けのサイト制作で、売り上げは半期で2億6100万円。 6つ目は「ネットワークソリューション事業」。高速インターネット接続や貴重なデータを守るための「データセンター」の運営がメインです。売上高は18億9800万円。 こうした各部門の売り上げを合計すると、売り上げは半期で約80億円。堀江社長は著書の中で「この数字に3をかけてもらえば、だいたい2004年度の売上高が出せるのではないか」と述べています。というわけで、ライブドアは2004年度9月の業績予想を250億円に大幅上方修正しました。 ポータルサイト「ライブドア」は、6月の閲覧数が1億だったのが、6月末、プロ野球参入を発表したあと、9月には3億1000万と、3倍に急増した(ネットレイティングス調べ)。サイトへの訪問者が急増すれば、広告収入も急増したはずです。 ITという将来有望な分野で急成長する売り上げ。全国に知れ渡った「ライブドア」の知名度。まさに、ライブドアには死角がないようにも見えます。 しかし、「集客力を引き上げても顧客をひきつけるだけのコンテンツは見劣りする」(日経『ライブドア型破り経営』2004年11月5日付)という指摘があります。 もちろん、ヤフーとの比較論なのでしょうが、確かに、ヤフーには「ヤフーオークション」というキラーコンテンツがあります。ライブドアがヤフーを凌ぐコンテンツは、現時点ではWeb日記「blog」です。ほたるも「ど素人の中国株日記」はライフドアのblogを使っていますが、これがどこまで収益を生むコンテンツに発展するのかは未知数です。 しかも、ライブドアの閲覧数が急増したとはいえ、まだヤフーの90分の1(2004年9月時点)にとどまっています。 一方、ライブドアの快進撃は、株式市場抜きには語れません。 株式市場を通じて資金を調達し、企業を買収。時価総額を拡大し、さらに資金を調達、新たな企業の買収・・・という繰り返しで、成長してきました。 2000年4月 東証マザーズに上場。60億円を調達。 2001年7月 株式を3分割 2003年8月 株式を10分割 2003年9月 公募増資で51億円を調達 2004年2月 株式を100分割 2004年3月 バリュークリックジャパンを36億円で買収。日本グローバル証券を64億円で買収。 2004年4月 公募増資で382億円を調達 2004年8月 株式を10分割 この歩みを見て、中国株投資家の方は、あれって思いませんか? そうです。急成長する中国企業にそっくりです。株式を分割・小口化して、投資家が買いやすくする。そして、増資して資金を調達し企業買収・・・。 たとえば、中国の不動産大手「万科企業」は株式市場から調達した資金を積極的に不動産買収に活用して急成長しました。(研究室「中国財閥を考える〜成長神話の主役たち」参照) ただ、ライブドアについて、日経「ライブドア型破り経営」(2004年11月6日付)は次のように指摘しています。 「ライブドアの2004年9月期の株主資本利益(ROE)は10%程度とみられ、ここ数年50%前後のヤフーに比べ、大きく見劣りする。肝心なのは投資家から預かった資金でいかに効率よく利益をあげるかという資本効率だ。企業を買い集めるだけでは、これまでのような資本政策、買収戦略は継続できないだろう」 同感です。その意味で、堀江社長はプロ野球の次は「地方競馬」の経営に意欲を示していますが、これはいただけません。地方競馬の経営の厳しさは、いまさら説明するまでもありません。 個人的な趣味で、ポケットマネーで、地方競馬を経営するなら、自由でしょう。しかし、いま、ライブドアの株主が果たして「地方競馬の経営」を期待して株式を購入したのでしょうか? 私はきっとIT分野という本業に期待して投資したのだと思います。 さて、最後に中国株投資の勘所にお話を展開したいと思います。 中国企業にもコングロマリットと言われる企業群があります。「二季報」の巻末を見ますと、20程度あります。こうした企業は、金融、不動産、インフラなど、さまざまな業態を扱っています。もちろん、有望な企業も少なくありません。 ただ、私自身は、有望な分野に特化して、一心不乱に突き進んでいる企業が好きです。 せっかく有望な分野で利益が上がっても、不採算分野が帳消しにするリスクが少ないからです。たとえば、私の保有する銘柄の中で、きちんと含み益がある、香港H株2688「新奥気控股(シンアオ・ガス)」。中国初の民間ガス会社で、まだ配当は出していませんが、盛んにガス供給先を拡大するため前向きな投資を進めています。それを好感してか、株価は上昇しています。 中国株は将来、大化けする銘柄と大コケする銘柄が潜んでいることから「玉石混交」の市場です。ただ、海外から中国市場に多額の資金が流入し、面白いように資金調達できるようになると、中国企業の経営者の中にも、かつて日本企業が失敗したように「本業」以外の事業や物件に手を出して満足する経営者が続出する可能性もあります。 そこをどう見分けるのか、リスクが多いといわれる中国株のリスクを少しでも軽減するポイントかもしれません。
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