見上げる先には空があった。
真っ青な空が。
世界を両腕で包み込むかのような優しき青。
いかなる者をも寄せ付けず、ただ一人存在し続ける孤高の青。
はじまりと終わりを司り、すべてを見守る窮極の青。
何よりも青い青…。
手を伸ばせば届きそうで、それでいて決して届くことのない不可侵の領域。
太陽も風もそこから色を奪うことは出来ない。
そんな真夏の蒼穹。
生い茂る深緑の間からのぞく空は、ぞくりとするほど青かった。
それは心を見透かされているかのような感じ。
言い知れぬ不安と恐怖。
でも同時に、いつでもどこでも、空だけは自分を見つめてくれているという安堵感でもある。
世界の果てに一人立ちすくむことがあろうとも、きっと空は青くあり続けるのだろう。
そんな心に染み入る青。
どこまでも続く夏。
光溢れる季節。
その空は果てしなく高く、そしてただひたすらに青かった。
<了>