あとがき
久々の長編は巫女さん話です。そしてテーマは女の子の友情!?(笑)
世界観としては五剣伝なんかと一緒で、時代的には五剣伝の約800年後といったところです。
五剣伝の最後に神、天使、悪魔、人間の間で条約が結ばれ、
人界と魔界・天界の間の行き来は禁じられることになる。
そして人界、すなわちこの惑星には神によって結界を張られることになる。
そのため、悪魔は人界に入ることは出来なくなっていたのだが、
たまに特に転移魔法が得意な魔物がやってくることがあるのだ。
そういう者は、かつて人間が人界に来るときにあけた時空の穴(梓川神社上空)から
入り込んでこようとする。そこは穴の分だけ結界を破りやすいということなので。
まぁ、それでも突破されるということがこれまで800年なかったのは、
魔界の方でも出て行くものを取り締まっているからであり、
そう考えると今回は非常に稀なケースであると言える。
では、この話についてです。
- 梓川 沙紀(あずさがわ さき)
- 本編の主人公(?)にして巫女。16歳。
幽姫の依代となることができるという変わった能力をもつ。
少しおっとりしていていまいち頼りない感じだが、責任感などは人一倍強く、
また、親友の礼衣をなにより大切に思っている。
とうとう死ぬまで術を使えるようにはならなかったが、
陶兵衛の後を継いで梓川神社の神主になると、通常の社務をこなす傍ら
結界の管理、術者の育成、歴史や術に関する書物の編纂などに力を尽くし、
このトウホウという国を守ることに生涯を捧げた。
- 安藤 礼衣(あんどう れい)
- こちらも巫女さん。16歳。
沙紀とは対照的に明るく活発な性格で、なにごとにも動じない強い心を持っている。
そしてやはり親友の沙紀のことをなによりも大切に思っている。
史上最年少で1級術者になった彼女はその後も術を学び続け、
やがて当代最高の術者としてその名を歴史に刻むことになる。
だが、トウホウから外に行くことはついになく、神主となった沙紀のよき相談役として、
またよき友として、生涯その傍らに居続けた。
- 幽姫(ゆうき)
- 800年前の人物で、武人。神技『波斬』を編み出した人。もちろん女性です。
800年前の条約締結直前に、魔界に閉じ込められることを嫌った悪魔が
大量に人界に押し寄せてきたことがあったのだが、そのときにただ一人で
悪魔に立ち向かい、トウホウの地を守ったのが彼女である。
彼女はこの闘いで幾多の魔物をすべて追い払うものの、最後に力尽きて命を落とす。
だが、彼女の『この国を守りたい』という心は消えることがなく、
今でも愛刀の天薙に宿って残っているのである。
そして彼女とその刀を祭る為に作られたのが梓川神社なのだ。
今回は依代が沙紀だったために使うことが出来なかったが
本来は魔法にも長けており、人間としては最強クラスの人物である。
なお、誰でも依代にできるわけではなく、沙紀は特別である。
おそらく精神波長など何らかの要素が一致したためであろう。
- 魔物
- 今回の敵役。魔界から来た悪魔。
幽姫の指摘どおり、魔界で生きることがうまく出来ず、人界に来て
人間を喰って生きようと考えていたのである。
条約締結のときから多少改善されたとはいえ、相変わらず魔界は弱肉強食の世界であり
弱いものは確実に淘汰される。
それゆえ、彼のように転移魔法に長けているものならば、
外へと逃げようと考えるのも無理からぬことであろう。
- 梓川 陶兵衛(あずさがわ とうべえ)
- 梓川神社の神主にして、沙紀の祖父。
幼くして両親を亡くした沙紀を一人で育ててきた。
本来なら魔物対策の責任者として、高位の術者として
真っ先に魔物に挑むはずだった人物だが、
駆けつけたときにはすでに魔物は沙紀(幽姫)に倒されており、
したがって今回は全然活躍の場がなかった。
- 天薙(あまなぎ)
- 梓川神社に御神体として祭られている日本刀。持ち主である幽姫の心を宿している。
純粋に刀としてもかなりの業物であり、
また人界の作ながらも強大な魔力が秘められており、
生きる者、死せる者を問わずその魂を喰らうともいわれている妖刀。
梓川神社自体の結界は、この刀を守るものであると同時に、
実はその魔力が外に放出されないように封じ込めるものでもある。
何故なら、魔力に引き寄せられた魔物がこの刀を手にすれば、
それは必ずやトウホウ、ひいてはこの星に大いなる災いを生むことになるからだ。
今回陶兵衛が『まずい』と言ったのはこういうことなのである。
2001.4.14