暗闇に白き閃光が走る。
それは一対の刃の形を成し、
最後まで残っていたグレーターデーモンの首を一瞬で刎ねた。
轟音を立てて崩れ落ちる青黒い巨体。
その背後で音もなく軽やかに着地する小さな白き獣。
「ふむ、最近の悪魔はホネがないのう」
呟きながら軽く首を振り、長く鋭い牙についた血を払う。
彼こそが首狩りを生業とする凶悪なウサギ、
その中でも幾星霜を経て己の技を極限まで研ぎ澄ました
ボーパルバニーのパルであった。
死臭の漂う広間の真ん中で辺りを見回すと、
折り重なる悪魔どもの屍の陰に薄汚れた宝箱があった。
「紅葉と青葉も待っておるし、これで最後にするか」
そして目と鼻と耳を駆使して宝箱に仕掛けられた罠を特定し、
前脚を器用に使って慣れた手つきで罠を解除する白き人外の忍者。
宝箱の中には”奇妙な野菜”が3個。
だが、どう見てもニンジンにしか見えない。
「今日はついおるな。集合前に腹ごしらえでもしておくかのう」
もともと愛嬌のある顔に更に満面の笑みを浮かべる。
そして鑑定もせずに(忍者なのでもとから鑑定など出来ないが)
躊躇い無く1本目のニンジンにかぶりつく。
「これは…”豪華なニンジン”だな」
普通のニンジンよりもどこか上品な味が口の中を満たす。
あっと言う間に完食するとすかさず2本目に手を伸ばす。
「次は……おぉ”極上のニンジン”ではないか!」
まろやかな甘味と深みのある味わい。
すべては無農薬有機栽培の賜物である。
やや泥臭い感じもするがそれまた良い意味でのアクセントとなる。
ゆっくりと噛み締めるように味わい、時間をかけてこれを平らげる。
そしていよいよ3本目。
「…もぐ………こ、これは!?」
おおっと!”腐ったニンジン”!!
気付いたときには手遅れだった。
舌の痺れはすぐに全身にまわり、胃からは強烈な痛みが湧き上がる。
徐々に意識が朦朧となり、虚構と現実の境界が曖昧になる。
脳が活動を停止する直前に、一瞬だけ鮮明な映像が浮かぶ。
「あぁ、向こう岸にニンジン畑が……」
そして…レベル1000忍者は死んだ。
<本日の教訓>
不確定アイテムはちゃんと鑑定してから使いましょう。
<了>
wiz風味文章付き落書きの続編です。
今回のキャラはボーパルバニーなんだけど、
まんまだと面白くないのでデフォルメ(?)してみました。
やっぱボーパルバニーは可愛いですね。
実際に遭遇するとかなり怖いけど。
ちなみに文章の方は5回ほど書き直しました。
もっとwiz設定を盛り込みたかったんだけど、
いちいち解説入れてるとものすごく冗長になっちゃうんで、
削っては書き直し、また削っては書き直し…。(泣)
ストーリー自体もどんどん変化して、もはや殆ど原型を留めてません。
…しかし何で少女を描かずに動物なんか描いてんだろ、俺。
2005.5.29