雪。
今日も雪が降っている。
いつまでも降り止まない雪。
見渡す限りの雪色の世界。
そう、ここは北の最果て、”Eternal White”。
万年雪に閉ざされた処。
私はずっとここにいる。
生まれたときからずっと。
翼を持たない私は、ここから飛び立つことができないから。
でも、それでいいの。
私はここが好きだから。
この純白の大地が好きだから。
少し歩いて丘に登る。
舞い降りる雪の結晶に包まれながら、静かに風を感じてみる。
ここにはたくさんの風がやってくる。
風は色々なものを運んできてくれる。
春の色、夏の匂い、秋の音…。
そして私は、まだ見ぬ彼方に思いを馳せるんだ。
不意に風向きが変わる。
風が南へと流れ出してゆく。
私は目を閉じてゆっくりと歌いだす。
冬しか知らない私に季節の移ろいを教えてくれる世界に向けて。
精一杯の”ありがとう”を込めて。
それは翼を持たない私が、世界とつながるたった一つの方法だから。
私にできるすべてだから。
だから…。
風と共に、雪と共に、どうかこの歌が世界中に届きますように…。
冬の訪れを告げる北からの風は、
大空を駆け、遥かな世界へと吹き抜けてゆく。
真っ白な雪と少女の想いを乗せて…。
<了>