降り止まない雨の中で、僕は世界の終わりを見た。
色を失い、モノクロームに沈む世界。
燃え尽きるでもなく、崩れ落ちるでもなく、
ただ硝子のように儚く砕け散り、風に流されていった。
悲しく、美しいほどの静寂の中で。
吹き抜ける風は僕の前髪を揺らすけど、
宙に浮かぶ僕の存在はいささかも揺らぐことはない。
ふいに何かが視界の隅を通り過ぎる。
それは秋色に染まった楓の一葉。
雨に打たれ風に晒されてなお、己を失うことなく
ただ天の高みへと駆け上ってゆく。
やがて雨は止み、風は凪ぐ。
そこにはすでに世界はなく、
純粋なる無の中に僕が一人佇むのみ。
…いや、違う。
僕だけじゃない。
さっきの葉もどこかにいる。
どこかで鮮やかな赤色を闇の中に浮かび上がらせている。
だから僕は歩き出す。
同じ志を持つ者を探しに。
世界と決別してもなお生きることを望んだ
気高き一葉を探しに。
<了>