暗い。
それは夜だからだ。
真っ暗闇。
そんな中、俺は道を歩いて行く。

何もない道。
何も見えない道。
どこが道なのかさえ判然としない。
大地の感触だけを頼りに進む。

やや冷たい風が吹きぬけていく。
だがそれも、いつものことだ。
慣れてしまえば何ら気にする必要はない。
俺がいるのはそんな所なのだから…。

俺の前に道などないし、俺の後ろにも道はないだろう。
俺が歩いている瞬間、
そして俺の足元にだけ道は存在する。
そんな儚い道をひとり歩く。
遥か遠方の煌びやかな光を横目に。

雨。
久しぶりの雨。
ふと足を止めて天空を仰ぐ。
額を打つ雫が心地良い。
そんなささやかの恵みを
遮るものなど何もない世界。
ここはそんな所だから…。

そしてやはり闇。
それを心の刃の趣くままに切り裂いていく。
道は無限に続くだろう、
この心が輝きを失うまで。
その刃が砕け散る時まで。

道はどこから来て、どこへ行く?
俺はどこから来て、どこへ逝く?
道はただ、闇の最も深き場所へと俺をいざなうのだろうか。
それが心の望むところなのだろうか。
…いや。
答えなど必要ないのだ。
今はそれでいい。

そしてまた俺は歩き始める。
―もう明日へは続かない道を―
<了>

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