帰り道。
背後に小さな気配がひとつ。
でも別に気にするほどではない。
いつものことだ。
家に着くとドアの前に猫が一匹。
振り返るとそこにも猫。
私は溜息を一つついて、彼らを家に招き入れた。
部屋の灯りをつける。
猫達は一瞬眩しそうに顔をしかめる。
だが次の瞬間には部屋の中を我が物顔で歩いていた。
私は”こんなこともあろうかと”用意してあった猫缶を開ける。
彼らはそれを無言で平らげると感謝する素振りも見せず、
一匹はテレビの上に座り込み、
もう一匹はソファーの上を転がりまわった。
夜。
電気を消すと、猫は勝手に布団の中に入ってくる。
こら、胸の上に乗るな。
苦しくて眠れん。
朝。
朝食を摂り、家を出ようとすると
猫達はドアの隙間を抜けてさっさと外に飛び出した。
そして私を待つこともなく、
一宿一飯の恩に報いることもなく、
どこかへと去っていった。
その日の夜。
私が家に帰ると、玄関の前には三匹の猫。
どれも昨日とは違う猫だ。
猫達は鳴き声をあげることもなく、
じゃれついてくることもなく、
じっと私を見つめている。
私は一つ溜息をつくと、
今日も小さな客人たちを家の中へと招じ入れるのだった。
<了>