静まり返った夜の雪原。
風の鳴き声も今は聞こえず、
静寂が辺りを支配する。
白銀の大地に深々と降り積もる漆黒の闇。
白と黒。
ただそれだけの世界。
止むことのない雪。
明けることのない夜。
永遠のモノクローム。
ただそれだけの世界。
光。
光が見えた。
虚無の中に灯った微かな光。
それは遥か彼方からこちらに向かって近づいてきた。
しじまを破る機械音。
大気を震わす力強い振動。
そしてまばゆいヘッドライト。
それはたった一輌の夜行列車。
列車は走る。
雪を蹴散らし闇を裂いて。
世界の均衡を狂わせ、
それでいてそのことに気づくこともなく。
やがて列車の明かりは遠ざかり、
それからまた彼方へと去っていった。
再び訪れる静寂。
再び訪れる宵闇。
そして見渡す限りの無限の雪原。
始まりも終わりもない閉ざされた世界。
白と黒。
ただそれだけの世界。
駆け抜けた一瞬の閃光など忘れたかのように、
また雪は降り、夜は続いていった。
<了>