THE TEAR OF THE MOON

闇夜の空にぽっかり浮かぶ 月。
赤味がかった黄金色に輝く 月。

ひたすらに大きくて
ひたすらに丸くて
ひたすらに儚げで
寂しげで
……吸い込まれそうで。

月。
一人ぼっちの月。
そのかけら一つ、空から落ちた。
ゆっくりと、ゆっくりと、ゆっくりと…。
風に揺られ、雲に運ばれ、星に導かれ、
いつしかそれは、私の手のひらに舞い降りた。

柔らかくて、硬い。
暖かくて、冷たい。
なんか不思議な感じがするね。
ほのかな光に照らされて、微かにほころぶ私の顔。

見上げる先には果てなく広がる無限の空。
そしていつもそこにいる月。
一人ぼっちの月。

このかけらは、月から私へのプレゼント。
ともに孤独な世界で生きる者へ、
月が送ったささやかなエール。
そして、ともに孤独を知る者だけに見せる
隠していた涙の雫。
寂しがりやの月の本当の心なんだ。

気がつくと手のひらのかけらは、
赤味がかった黄金色の光を徐々に弱めていき、
ついには跡形もなく闇に消えていった。
束の間の安らぎ。
永遠の中の一瞬のできごと。
でもいいんだ。
月の心はたしかに受け取ったから。
そして私の心の中にそっとしまっておいたから。

あしたもまた一人ぼっちの私。
いつまでも孤独な世界で生きる私。
でももう大丈夫だよ。
もう泣かないよ。
心にはいつも、ほのかな光が灯っているから。
空にはいつも、優しい月がいてくれるから。
<了>

back