甲高く響く靴音。
先の見えない暗黒回廊。
遠くから聞こえてくるのは教会の鐘。
その悲しき音色は天への誘いか、地獄への導きか。
道の両端に横たわる奈落。
絶え間なく耳を打つ断末魔にも似たうめき声。
存在することを否定された者たち。
時折這い上がるそれらの異形を、無造作に吹き散らしながら進む。
不意に空気の流れが変わる。
ひらけたその場所の中心には小さな祭壇。
そこにはすでに崇めるものも崇められるものも姿はなく、
ただ薄汚れた魔方陣が古の血の惨劇を記憶するのみ。
遥かな天井からもれる星明りは何も語らない。
これまでも、これからも。
そして果てしなき追跡は続いてゆく。
それは悠久の刻と共に巡る旅路。
<了>