2004年 米・ケンタッキー州レキシントン 出張報告


2004年10月、副業で勤めている会社の出張で、アメリカのレキシントン(Lexington)へ行く機会がありました。 レキシントンは日本でいうところの北海道・日高地区、つまりアメリカ一の馬産地なのです。すばらしい。 その時の様子をまとめました。


出発前

今回は仕事で出張なので当初はあまり馬関係についてはまじめに調べていなかったが、直前になってちょっと調べ始めたらレキシントンは予想以上にすごい馬産地だということが分かり慌ててしまった。

そんな中、やはりアメリカの有名種牡馬を見てみたいということで、出発2日前の月曜日、レーンズエンドファーム(Lane's End Farm)の見学応対担当者 Jill McCully さんに見学させてほしいとメールしたが、結局出発まで返事はなかった。


10/06 (Wed)

見学させてもらえるかどうかはっきりしなかったが、とりあえず成田で手土産を用意した。 1300円の日本のクッキーだ。 アポ無し見学は不可ですとか言われても、手土産を渡しつつうなだれて帰ろうとしたらかわいそうに思われて見学させてもらえるんじゃないかというよこしまな考え付き。 名付けて 「同情を誘ってでもムリヤリ見学してしまえ大作戦」 だ。 ^^;

シカゴに着いたところで電話で確認しようかとも思ったが、そこで断わられてしまうと手土産も持て余すことになってしまうので、やはりアポ無しで突撃することに決めた。 13:00 ごろレキシントン到着。レンタカーを借りてホテルへも行かずにレーンズエンドファームへ直行。 レキシントン・ブルーグラス空港(LEX)から 60号線を西へ向かい、62号で右折して 1km ぐらい進むと 右手にまず "Lane's End Farm Stallion" の看板があり、続いて 300m ぐらい先に "Lane's End Farm Office" の看板。 空港から車で 15-20分ぐらいだ。
# うちの会社広しといえども、海外出張でホテルにチェックインする前に空港から直接種牡馬見学に行く人はそうはいるまい。^^;;

スタリオンの看板
レーンズエンドファームのオフィス

オフィスで Jill さんと会えたが彼女はこちらが送ったメールを読んでいないようだった。 見落とされたか何らかの理由で届かなかったか。

で、今から見学できないかということを聞いてみたが、今日はテレビの取材とのことでダメ。 あさっての夕方では遅すぎるということで、あっさりアウト。 Jill さんはとてもすまながっていて、明日なら大丈夫だけどとも言われたが、明日は仕事なんだよな...

一瞬、仕事をさぼってなどとという考えも頭をよぎったが、それでは何をしに来たのか本当に分からなくなるので断念。 帰りぎわに手土産を渡すも引き取めてはもらえなかった。残念ながら同情大作戦は不発に終わった(あたりまえだ)。


レーンズエンドファームがだめだったので空港方面へ戻る。 60号を挟んで空港の向かい側にはキーンランド競馬場(Keeneland)があるので立ち寄る。 キーンランドの開催は年2回しかないらしい。その秋開催はあさってから。 なので閉まっているのかと思ったらちゃんと中まで入れるのだ。 場外馬券売場として開けているらしく(ほとんど人はいなかったが) ギフトショップも開いているしホームストレッチ前までも行ける。写真を撮りながらブラブラ。
# うちの会社広しといえども海外出張でホテルにチェックインする前に... ^^;;;
キーンランド競馬場入口
パドック

本馬場
スタンド


10/07 (Thu)

今回の仕事は2日間の会議への出席。 初日が終わった時点での進捗状況を考えると、2日目は午前中だけで終わってしまいそうな気がヒシヒシとしてきた...

10/08 (Fri)

そこで早朝もう一度 Jill さんにメールを出す。
「もし仕事が早く終わったらもう一度行ってもいいですか?」。
すると今度はちゃんと返事が来た。
「私は仕事でシカゴへ行ってしまって不在だけど、スタリオンへ行って厩務員にどの馬を見たいか言って下さい。お土産のクッキーありがとう。とてもおいしかったです」
とかなんとか。おお、不埒な野望入りクッキーの効果がここで出たか?

日頃の行いのおかげか、予想通り会議は午前中で終了。さあレッツゴー。いざ行くぜ。

スタリオンに着くと、恐そうな黒人厩務員さんがぞろぞろいたが、ひるまずにあいさつ。

「ここに来て見せてほしい馬を伝えるように Jill さんに言われたんですけど」
「おお、もちろんいいぜ。さあ横の入口から入ってこいよ」
という感じで入れてくれた。

種牡馬の名前一覧が書かれた紙を渡され、見たい馬にチェックを入れろと言われる。 実は Jill さんに出したメールには「キングマンボ(Kingmanbo)とエーピーインディ(A.P.Indy)だけでも見られればそれだけでハッピーです」などと謙虚なことを書いたワタシだが、ここぞとばかりにチェックを入れる。 ...とはいえあんまりチェックしすぎるとウロウロする時間もかかるし、さすがに悪いよなと思って6頭にしておいた。 厩舎は日本のスタリオンと同じような感じで、中央の通路の両側に馬房がある構造になっていた。

厩舎の様子

さあいよいよご対面。まずはケイムホーム(Came Home)の馬房だ。 と思ったら、おじさんなんとおもむろに引き綱を持ってきて馬房を開けるではありませんか。 えええー? ひょっとして一頭ずつ外に出してくれるの!? すげーと思う反面、「調子に乗って片っ端からチェックしなくてよかった〜」 と内心ほっとしたのであった。

ケイムホームを厩舎の外へ出し、おとなしく立たせてくれる。おお、種牡馬事典みたいだ。

「ケイムホームっていつだったかのチャンピオンホースでしたよね」
「そう、2歳チャンプになった」
「ああ、BCジュベナイルを勝ちましたっけ」
などという会話をおじさんと交わす。

次はレモンドロップキッド(Lemon Drop Kid)。 1999年のベルモントS(Belmont Stakes)で、三冠がかかったカリズマティック(Charismatic)を3着に下した馬。

ケイムホーム
レモンドロップキッド

さあ、そしていよいよ目的の一頭キングマンボ(Kingmanbo)。 言わずと知れた、日本のエルコンドルパサー(1999年 仏・凱旋門賞2着)やキングカメハメハ(今年の日本ダービー馬)の父である(ついでにアメリカンボスの父)。それから上述のケイムホームもキングマンボ産駒だ。 いやー、もう震えた震えた。あなたが御尊父様ですかという感じ。思わず 「触ってみてもいいですか?」 「もちろんいいよ」。 マジッすか。 なんと太っ腹なスタリオンだ。そんな訳でこの後の馬たち撫でまくり。^^;
# しかしおじさんはエルコンドルパサーもキングカメハメハも知らなかった...

続いてガルチ(Gulch)。もう 20歳だがまだ年間100頭に種付けしているらしい。 やはり歳を重ねているせいか他の馬たちに比べると落ちつきがある。

キングマンボ
ガルチ

そしてもう一頭の目的馬エーピーインディ(A.P.Indy)。 この馬がこのスタリオン No.1 種付料 ($300,000でサンデーサイレンスより高い) と聞いていたが、今年はキングマンボも同額まで上げたとのこと。 ちなみに上には上がいるもので、近くの他の牧場にいるストームキャット(Storm Cat)がアメリカ No.1で $500,000 だと教えてくれた。 No.2 がエーピーインディとキングマンボなんだそうな。 で、そのエーピーインディ。馬房から出てくる時からなんというか貫禄十分。 落ちつき払ったその立ち姿からはオーラを通り越してもはや後光が差しているという雰囲気だった。 当然ナデナデしまくり。^^;

最後はエーピーインディ産駒にして去年の全米年度代表馬だが、不運にも最近ケガで引退したばかりのマインシャフト(Mineshaft)。 まだ5歳ということもありヤンチャな感じだった。

エーピーインディ
マインシャフト

とまあこんな感じで失神・卒倒寸前連続のレーンズエンドファーム見学は幕を閉じたのであった。


続いて今日から秋の開催が始まったキーンランド競馬場へ改めて行ってみたら... なんじゃこりゃ。すごい人出だ。今日は平日だぞ? みんな仕事してるのか? (人のこと言えるのか?)

一昨日ガラガラだった駐車場も今日は大混雑。 停められるところを探しているだけで日が暮れそうだったので競馬場は断念することにした。今日はもう一つ目的の場所があるのだ。

混みまくりの駐車場


それはケンタッキーホースパーク(Kentucky Horse Park)。 日本でいうところのノーザンホースパークみたいなところ。 基本的には体験レベルからプロ級までの乗馬施設なのだが、入ってすぐのところに等身大のセクレタリアト(Secretariat)の銅像やら マンノウォー(Man o' War)のメモリアル広場やらがあったりと入口からしてすごい所だった。 ちなみに歴史的名馬であるマンノウォーはこのレキシントン産で、地元ではかなりの英雄扱いになっている。 空港横から始まる大きな環状道路がマンノウォー通りと名前がついているぐらいだ。

ケンタッキーホースパーク入口
セクレタリアト像

マンノウォー像
マンノウォー通りの看板 (空港近く)

パークの中には馬博物館もあり、紀元前からの馬の歴史、アメリカ競馬の歴史、各種大レースの実際の優勝カップなどがあった。 まあ失神度という点では以前行った英・ニューマーケットの博物館の方が上だが、ついつい見入ってしまった。

そして今日最後の目的地は、これもパーク内にあるホールオブチャンピオン(Hall of Champion)。 歴代のチャンピオンホースの記念碑かなにかが飾られているのかな、などと思って行ってみたら、これがとんでもない。 なんと住年のチャンピオンホースが実際に繋養されているのだ。

まずシガー(Cigar)。 16連勝の全米タイレコードの実積をひっさげて鳴物入りで種牡馬となったにもかかわらず、生殖能力がないということであっさり種牡馬引退してしまった馬。 現役復帰するなんて噂も一時流れたが、まさかこんなところで会えるとは思わなかった。

そしてもう一頭が、なんとなんとのジョンヘンリー(John Henry)。 マンオウォーやセクレタリアトと並んで英雄扱いされている馬だ。 まだ存命だったとは知らなかった。いや驚いた。 もう 30歳でさすがにヨボヨボだったが。

シガー
ジョンヘンリー


おわりに

ということで今回の出張は思いがけず(ほんとか?)かなり充実の馬ツアーにもなってしまった。 この充実感の余韻に浸りながら翌日 3:00 に起きて帰国の途に着いたのであった。

いつかまた、今度はもっと時間に余裕を持って、必ずもう一度レキシントンに来よう。

おわり
おおたん牧場
ユメケイバーズ

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