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■甲州法度之次第」は天文16年(1547)6月に武田晴信が制定した武田氏の分国法。「高白斎記」天文16年5月晦日条に「甲州新法度之次第書き納め進上仕り候」とある。腰原哲郎訳・甲陽軍鑑の品第一から全文を転記した。内容は多岐に渡り、これを読めば武田氏の領国経営の概略がつかめる。それに加え、戦国期の社会構造の一端も垣間見え面白い。訴訟(公事)に関する条文が多く見受けられ、社会全体が騒乱に明け暮れていた様子を伝えている。第二十五条・二十六条では子どもの喧嘩について言及。第十七条は「喧嘩両成敗」の規定だ。第二十条に「天下戦国の上は諸事をなげうち武具の用意肝要たるべし」とあり、当時の人も戦国という認識を持っていたことがわかる。

甲州法度之次第目次

■第一条 国中の地頭人、子細を申さずして、恣に罪科の跡と称し、私に没収せしむるの条 甚だ自由の到なり。若し犯科人、晴信被官たらば地頭のいろいあるべからず。 田畠のことは下地を加えて別人に書くべし。年貢・諸役等、地頭へ密かに弁償すべし。恩地に到っては書き載するに及ばず。次に在家ならびに妻子資財の事は定法の如く職へ之を渡すべし。

■第二条

公事、沙汰の場へ出るの後、奉行人の外披露致すべからず。況や落着の儀に於いてをや。若し又、いまだ沙汰場へ出でざる以前は奉行人の外たりといへども、之を禁ずるに及ばざるか。

■第三条

内儀を得ずして他国へ音信、書状を遣わす事、一向停止せしめおわんぬ。 ただし信州在国の人、謀略の為に、一国通用者は是非なき次第なり。 若し境目の人、日々書状を通し来れば、之を禁ずるに及ばざるか。

■第四条

他国へ縁者を結び、あるいは所領を取りあるいは被官を出し 契約の条甚だ以って違犯の基たるか。堅く之を禁ずべし。 若し此れの旨に背く輩あらば、へいかいを加ふべきものなり。

■第五条

札狼藉田畠の事、年貢他においては地頭の計らいたるべし。 恩地に至っては下知を以て之を定べし。但し負物等の儀に就ては 分限に随いて其の沙汰あるべし。

■第六条

百姓、年貢を抑留するの事、罪科軽からず。 百姓に於いては、地頭の覚悟に任せ所務せしむべし。 若し非分の儀あらば検使を以って之を改むべし。

■第七条

名田地、意趣なく取り放すの事、非法の至りなり。但し年貢等過分の無沙汰あり あまつさへ両年に至りては是非に及ばざるか。

■第八条

山野の地、打ち越すに就き四至傍尓境を論ずる者は本跡を糺明しこれを定むべし。 若し又旧境に依って、分別に及ばざる者は、中分偽るべし。 この上猶諍論の族あらば、別人に付くべし。

■第九条

地頭申す旨あって、点札を下すの処、作毛を捨つるに至っては、翌年より彼の田地 地頭の覚悟に任すべし。さりながら作毛を刈り取らずといえども 年貢を弁済せしめば別条あるべからず。 兼ねては又、地頭非分においては、知行の内半分、召し上ぐべきものなり。

■第十条

>各恩地の事、自然水早の両損ありと雖も、替地を望むべからず。 その分量に随ひ、奉公致すべし。然りと雖も、忠勤をぬきんづる輩においては 相当の地これを充て給ふべし。

■第十一条

恩地を抱へる人、天文拾年辛丑以前、拾箇年、地頭へ夫公事等勤むることなくんば これを改めるにおよばず。但し九年に及ばば、事の躰に随ひ下知を加ふべし。

■第十二条

私領の名田の外、恩領地左右無くして沽却せしむる事、これを停止しおわんぬ。 この制の如しと雖も、拠なくんば子細を言上し、年期を定めこれを売買せしむべき事。

■第十三条

百姓、夫を出すところ、陣中に於いて殺さる族は、彼の主その砌三十日は 免許せしむべし。然して前々の如く夫を出すべし。 荷物失却の事はこれを改むるの及ばず。 次に夫逐電の上、本主人に届けずして許容せしめば、たとひ数年を経ると雖も 罪科を逃れがたし。付。夫さする咎めもなく主人殺害に及ばば その地頭へ拾ヶ年の間、右の夫勤むべからず。

■第十四条

親類、被官、私に誓約せしむるの条、逆心同前。 但し戦場の上に於いては忠節を励まさむため盟約致すか。

■第十五条

譜代の被官他人召し仕ふの時、本主人見合せ捕るの事停止おわんぬ。 旨趣を断り、請取るべし。兼ねて又主人聞伝へ、相届くるの処、当主領掌の上 逐電せしめば、自余の者を以って壹人これを弁ふべし。 奴婢、雑人の事は、その沙汰なく拾ヶ年過ぐれば、式目に任せこれを改むべからず。

■第十六条

奴婢逐電以後、自然路頭に於いて見合せ、当主人にたださんと欲して 本主私宅へ召し連るる事、非法の至りか。先ず当主人方へ返し置くべし。 但し境遠に依り、その理遅延の事、五十三日迄は苦しかるべからざるか。

■第十七条

喧嘩の事是非におよばず成敗加ふべし。但し取り懸るとも雖も 堪忍せしむるの輩に於いては罪科に処すべからず。然れば贔屓、偏頗を以て 合力せそむる族は、理非を論ぜず同罪たるべし。 若し不慮の殺害、刃傷を犯せば、妻子、家内の輩は相違あるべからず。 但し犯科人、逐電せしめば、たとい不慮の儀たりと雖も、先ず妻子を当府に召し置き 子細を尋ねべし。

■第十八条

被官人の喧嘩並びに盗賊等の科、主人に懸かるべからずの事は勿論なり。 然りと雖も、実否を糺さんと欲するの処に、件の」主人科なきの由、頻に陳じ申し 相抱ゆるの半、逐電せしめば、主人の所帯三ヶ一、没収すべし。 所帯なくんば、流罪に処すげきものなり。

■第十九条

意趣なくして、寄親を嫌ふ事、自由の至りなり。然の如きの族に於いては、自今以後 理不尽の儀、定めて出で来らんか。但し寄親非分際限なくんば 解状を以って訴訟すべし。

■第二十条

乱舞・遊宴・野牧・河狩等に耽り、武具を忘るべからず。 天下戦国の上は、諸事をなげうち、武具の用意肝要たるべし。

■第二十一条

河流の木並びに橋の事、木に於ては、前々の如く之を取るべし。 橋に於ては、本所へ返し置くべきなり。

■第二十二条

浄土宗、日蓮宗と、分国に於いて法論あるべからず。 若し取り持つ人あらば、師檀共に罪科に処すべし。

■第二十三条

被官出仕座席の事、一両人定め置くの上は、更に之を諭ずべからず。 惣別、戦場にあらずして、却却意趣を争ふは、却って比興の次第なり。

■第二十四条

沙汰に出づる輩に於いては、載許の処に待つべし。相論の半は、理非を決せず 狼藉を至すの条、越度なきにあらず。然れば善悪に及ばず、論所を敵人に付くべし。

■第二十五条

童部の口論、是非に及ばざるか。但し両方の親、制止を加ふべきの処却って 欝憤を致さば、其の父、世の為誡めずんばあるべからず。

■第二十六条

童部誤り明友等を殺害する者は、成敗に及ぶべからず。 但し十三歳以後の輩に於いては、其の咎めを免れ難し。

■第二十七条

本奏者をさしおき、別人に就き、訴訟を企て又他の寄子を望むの条姧監の至りなり。 自今以後停止すべし。此の旨具に以て、先条に載せおわんぬ。

■第二十八条

自分の訴訟、直に披露致すべからず。寄子の訴訟に就きて 奏者を致すべき事勿論なり。然りと雖も処置に依って遠慮あるべきか。 沙汰の日の事は、先条に載する如く、寄子、親類、縁者等申す趣、一切禁止すべし。

■第二十九条

縦其の職に任すと雖も、分国諸法度の事は、違犯せしむべからず。 細事たりと雖も、披露致さず勝手に執行ふ者は早く彼の職を改易せしむべし。

■第三十条

近習の輩、番所に於いて、縦い留守たりと雖も世間の是非並びに声高 之を停止せしむべし。

■第三十一条

他人養子の事、奏者に達し、遺跡印判を申し請くべし。然うして後父死去せしめば 縦い実子たるべからずと雖も、叙用に能はざれ。但し継母に対し不孝たらば 悔い還へすべし。次に恩地の外、田畠・資財・雑具等の儀、亡父の譲状に任すべし。

■第三十二条

棟別法度の事、既に日記を以って其の郷中へ相渡すの上は、或いは逐電せしめ 或いは死去せしむと雖も、其の郷中に於いて速やかに弁済致すべし。 其の為新屋を改めざるなり。

■第三十三条

他郷へ家を移す人あらば、追って棟役銭を執るべき事。

■第三十四条

其の身或いは家を捨て或いは家を売り、国中徘徊せば 何方迄も追って棟別銭を取るべし。然りとも雖も其の身一銭の料簡なき者は 其の屋敷抱ゆる人、之を澄すべし。但し屋敷に於いては二十疋の内は その分限に随って、其の沙汰あるべし。自余の郷中一統せしめ、之を償ふべし。 縦い他人の屋敷、同家たりと雖も、家屋敷相抱ゆるに付いては、是非に及ばざるの事。

■第三十五条

棟別侘言、一向停止おわんぬ。併しながら、或いは逐電、或いは死去の者 数多あるに就き、棟別銭一倍に及ばば、披露すべし。 実否を糺し寛宥の儀を以って、其の分限に随い免許せしむべし。

■第三十六条

悪党成敗の家の事は、是非に及ばざる事。

■第三十七条

川流れ家の事、新屋を以って其の償致すべし。新屋なくんば、郷中同心せしめ 之を弁済すべし。水流れの事、拾間に至らば、改むるに及ばざるべし。 付。死去跡の事は、右に准ずべし。

■第三十八条

借銭法度の事無沙汰人の田地、諸方より相押ゆるの事、先札を以て、之を用ゆべし。 但し借状粉なきに至っては、其の方へ落着すべき事。

■第三十九条

同じく田畠等、方々へ借上書入るの事、先状を用ゆべし。 然りと雖も、謀書謀判に至っては、罪科に処すべし。

■第四十条

親の負物、其の子相済すべき事、勿論なり。子の負物、親方へ之を懸くべからず。 但し親借状加筆は、其の沙汰あるべし。若し又早世に就き親其の跡を抱ゆるに至っては 逆儀たりと雖も、子の負物、相澄すべき事。

■第四十一条

負物人或は遁世と号し、或は逐電と号し、分国に徘徊せしむる事罪科軽からず。 然れば許容の族に於いては、彼の負物弁済すべし。 但し身を売る奴婢等の事は先例に任すべし。

■第四十二条

悪銭の事、市中に立つの外之を撰るべからず。

■第四十三条

恩地借状に載する事、披露なく請取るべからず。其の上、印判に出し相定まらず、 若し彼の所領の主、逐電せしめば、事の躰に随ひ、其の沙汰あるべし。 年期を過ぎば、先例を挙げ、若し侘言に依って、出置きに就きては、恩役等勤むべき事。

■第四十四条

逐電の人の田地、借銭の方に取る者は、年貢・夫公事以下、地頭へ速やかに 弁済すべきの事。但し地頭負物相済せば、彼の田地相渡すべし。

■第四十五条

穀米地、負物之を懸くべからず。但し作人虚言を構えば、縦い年月を経ると雖も 罪科に処すべき事。

■第四十六条

負物人死去あらば、口入の者の名判を正し、其の方へ催促すべきの事。

■第四十七条

連判を以て借銭を致すに就ては、若し彼の人衆の内、逐電、死去せしめば 縦い一人たりとも雖も、之を代償すべし。

■第四十八条

相当の質物の儀は、定むる如く、若し過分の質物少分を以て之を取る者は 縦い兼約期を過ぐると雖も、聊尓に沽却すべからず。 利潤の勘定、毛なきに到っては、五、三月相待ち、頻に催促を加へ 其の上、猶無沙汰せしめば、証人を以って、之を売るべきなり。

■第四十九条

負物の分、年期を定め、田畠を渡す人は、土貢分量を書き加えせし 沽却せしめんと浴せば、買ふ人並びに買人其の地頭主人へ相届くべし。 其の儀なき上、或は折檻に依って、主人之を取放ち、或は子細あって 地頭之を改むる時、縦い買ふ人、負物人の借状を帯すと雖も、信用するに能はず。

■第五十条

米銭借用の事、一倍に至っては、頻に催促を加ふべし。 此の上、猶難渋せしめば、過怠あるべし。自然地下人等借銭の処、軽不肖の負物人 無沙汰せしめば、披露すべし。是亦右同前。

■第五十一条

蔵主逐電に就いては、日記を以て相調へ、銭不足に至っては 其の田地・屋敷取上くべし。但し永代の借状、二伝に於ては、之を懸くべからず。 年期地の事は、其の沙汰あるべし。年貢・夫公事等は、当地頭へ速かに勤むべき。 付。負物の人の借状、年期を経ば、負物之を懸くべからず。

■第五十二条

彌宜並びに山伏等の事は、主人を頼むべからず。若し此の旨に背く者は 分国徘徊停止すべきなり。

■第五十三条

譜代の被官、主人に届けずして、権威に募り、子を他人に被官を出だし あまつさへ田畠悉く譲り与ふる事、自今以後、停止せしめおわんぬ。 但し嫡子を本主人に出だすに就きては、自余、子の事、禁制に能はざるなり。

■第五十四条

百姓年貢・夫公事以下、無沙汰の時、質物を執り、其の断りなく分散せしむる条 非拠の至りなり。然うして年月を定め其の期に過ぎば、禁止に及ばず。

■第五十五条

晴信、行儀其の外の法度以下に於て旨趣相違の事あらば、貴賤を撰ばず 目安を以て申すべし。時宜に依って、其の覚悟すべきものなり。 右五十五ヶ条は、天文十六丁末(年)六月定め置きおわんぬ。 追って二ヶ条は天文二十三甲寅五月之を定む。

■第五十六条

年期を定めたるの田畠拾年を限り敷銭を以て、請取に合うべし。 彼の主貧因に依って、費用なきに於ては、猶拾年を加え相待つべし。 其の期に過ぎば、買ふ人の心に任すべし。自余の年期の積は右に准ずべし。

■第五十七条

百姓隠田あらば、数拾年を経ると雖も、地頭の見聞きに任せ、之を改むべし。 然うして百姓申す旨あらば、対決に及び猶以て分明ならずば、実検使を遣し 之を定べし。若し地頭非分あらば、其の過怠あるべし。