3. ナショナルスタッドよいところ

時間が近づいてきたので再び車に乗りナショナルスタッドへ移動した。 ニューマーケット競馬場と隣接していることもあって入口がちょっとわかりにくく、 一度通りすぎて調教師なんかの関係者入口まで行ってしまった。 正解は一番ラウンダバウト寄りの大きな門だった。 立派な門だったため入っていいのかどうか迷ってしまったのが敗因か。

Gate
ナショナルスタッド入口

門を入って右と左に分かれるところがあるが、右へ行くと競馬場へ行ってしまうのでここは左へ行く。 すると駐車場があるのでそこに停めた(きれいな芝生なのでちょっとためらってしまった)。 どうやらここは競馬開催時には観客用の駐車場として使われるようだ。 ニューマーケット競馬場とナショナルスタッドは、隣接しているというより同じ敷地内にあると考えた方がよさそうだ。

駐車場の脇には「おみやげ屋」兼「軽食屋」があった。 さらにツアー参加者の待合室も兼ねているらしい。 外から見た時、窓辺に社台グループの卓上カレンダーが置いてあるのを見つけて驚いた。

Shop
待合室

受付で名前を告げると係の人がリストを取り出し、私の名前のところに印をつけていた。 なるほど、インフォメーションからこの参加者リストがあらかじめ送られてくるのね。

おみやげ屋では競馬関係のグッズが色々と売っている。ボールペンとかTシャツとか血統表とかあって目移りしてしまう。 そんな中、私は今回ナショナルスタッドのジャンパーを買った。 これを着て北海道の牧場とかに行ったら「おや君はナショナルスタッドの関係者かい」 なーんて言われちゃって普段は見せてもらえない馬を特別に見せてもらえちゃったりして ...などというありえない妄想が膨らむ一方だ。

そうこうするうちにツアー開始の時刻となった。 外に出てマイクロバスまで歩いていく。ツアー参加者は総勢20名ぐらいだろうか。 バスがちょうど一杯だったところをみると人数制限があるのかもしれない。 運転手兼ガイドのおばちゃんの説明を聞きながらスタッド内を進んで行く。 私は英語があまり得意ではないしおばちゃんは早口だしで内容は完全には聞きとれなかったが雰囲気は十分伝わってくる。 やはり競馬は万国共通だ。

Bus
ツアーバスの中

途中、当歳馬の母子がいる放牧地の横を通っていく。気候が良いせいか完全に横になって寝ている馬がたくさんいた。 日本の牧場ではあんまり見ない光景なので、 最初見た時はみんなそろってお亡くなりになっているのかと思ってびっくりしてしまった(←バカ)。

Sleeping horse
昼寝中の母子

バスが停まったのは種牡馬の厩舎。種付け場も一緒にあり、おばちゃんの説明にも熱が入る(?)。 種牡馬が蹴られてケガをするのを防ぐために牝馬の後脚にはかせるソックスがおもしろい。

Guide
ガイドのおばちゃんが持っているのが馬用のソックス

厩舎の前には ミルリーフ(Mill Reaf) の大きな銅像がある。 1971年に英ダービー、キングジョージ、凱旋門賞のいわゆる欧州三冠を史上初めて勝ったこの名馬はナショナルスタッドの生産馬なのだ。 銅像とはいえ感動だ。

Mill Reaf
ミルリーフの銅像

現役種牡馬たちは近くにある放牧地に出払っていた。種付けシーズンも終わって鋭気を養う時期だ。 実は今回イギリスに来る前からここで ヘクタープロテクター に会うことを狙っていた。 初年度産駒デビューの年から割と応援していた種牡馬だったが、 日本から買い戻されて今はニューマーケットにいるという噂を聞いていたからだ。 ところがどこを探してもヘクタープロテクターが見当たらない。厩舎にも名札がない。 どういうことだと思ってガイドのおばちゃんに聞いてみたら、

「ヘクタープロテクターは今日本にいる。あんたの国に買われていったよ」
「なにーそんなばかな。日本から買い戻されたって聞いたけど」
「その後もう一度日本へ行ったの」
おーのーなんてこった。知らなかった。次の北海道ツアーの時に探さなければ。

ちなみに種牡馬は 7-8頭いたが、ファーストトランプ(First Trump) など、私いまいち不勉強のため知らない馬ばかりだった。 サドラーズウェルズとかフェアリーキングとかカーリアン以外にももっとヨーロッパの種牡馬を勉強しておけばよかった。

First Trump
ファーストトランプ
Handsome Ridge
ハンサムリッジ

近くには先のミルリーフの他、過去の名馬たちのお墓があった。 ああ歴史を感じるなあ。

また、少し離れたところにはこの春に産まれたばかりの当歳馬とその母馬たちが放牧されていたが、 なんとこの馬たちに触らせてもらえるのだ。 母馬たちは日本で昔売られていた(今もあるか?)ペッツというミントのお菓子が大好きなようで、 ガイドのおばちゃんが見学客たちにペッツを配ってくれた。 当歳馬がまた人なつっこくてむちゃくちゃかわいい。もうたまりませんな。

Colt
愛想のいいお子ちゃま
Mother
母馬(とペッツをあげる私)

さて、再びバスに乗って待合室に戻ることになった。 途中、牝馬がお産をするための施設の前を通ったり(風見鶏がコウノトリになっていた)、 ニューマーケット競馬場のスタンドが遠くに見える場所を通ったりした。 競馬場が見えるあたりでおばちゃんが「フランキーが乗ってた飛行機はその辺に落ちた」などと説明していた。ひえー。

(注)
2000年6月、フランキーことランフランコ・デットーリ騎手の乗った小型飛行機が、 ニューマーケット競馬場からグッドウッド競馬場へ向かうために離陸した直後に墜落した。 この事故で飛行機は炎上しパイロットが死亡したが、デットーリと同乗していたもう一人の騎手は一命を取りとめ無事に救出された。 特にデットーリは奇跡的に右足首の骨折だけで済んだ。 その後のデットーリの活躍ぶりを見て、この時無事で本当によかったと思うのは私だけではないだろう。
こうして一時間強のバスツアーは幕を閉じたのであった。 いやあ、楽しかった。機会があったらぜひまた来たい。

4. 卒倒! 競馬博物館
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